連載
日本国憲法を読む。 Vol.2
大多数の国民には憲法を守る義務はないということを知っていましたか?
ぼくは知りませんでしたし、学校で習った記憶すら無かってので、知ったときはびっくりしました。
これが本連載をはじめようと思ったきっかけです。今回はこのことについて考えます。
多くの日本国民に憲法を守る義務はない!
多くの日本国民に憲法を守る義務はありません。それは、憲法にはとても大事な役割があるからです。
それは、
権力の暴走を止めるストッパー。
多くの国民は権力をもっていないので、憲法を守る必要はありません。しかし、憲法をもとにつくられた法律を守る義務はあります。あたりまえですね?
憲法を守る義務があるのは、権力をもっていてそれを使える人に限られます。
- ほとんどの人は国民は憲法を守る義務がない
- 憲法は権力の暴走を止めるストッパー
日本国民が制限されるものは2つ
大ざっぱにいうと、日本国民が制限されるものは、権力をもつ人、もたない人で2種類あります。
- 権力なし:法律
- 権力あり:法律 + 憲法
権力者は大変です。ふつうの人よりもより多くの制限があるので。
憲法を守るべき人は憲法第99条に書かれている
憲法を守らなければいけない人は、日本国憲法に書いてあります。
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
日本国憲法第99条
国務大臣
総理大臣、財務大臣、防衛大臣...
TVでよく見る大臣のことです。内閣の一員は全員、国務大臣。
国務大臣は、憲法をもとにつくられた法律に基づいて、行政を執行する責任があって、行政府のトップです。
自分で法律をつくることもできるので権力者の中の権力者です。
国会議員
国会議員は法律をつくることが仕事で立法府です。
多くの国民の行動を制限する法律をつくることができるので権力者です。
法律をつくる人は気をつけないといけません。
悪い法律の有名なところでは、ナチスドイツの全権委任法(正式: 国民と国家の苦難を除去するための法律)があります。この法律は、ワイマール憲法に縛られずに政府がなんでもやっちゃおうよという法律でした。
憲法が国民と国家を苦しめているなら、それを無視していいっていう理屈。
怖いです。ブレーキのない自動車みたいなもので、実際に暴走しました。
裁判官
裁判官は人を裁く仕事で司法府です。
人を裁く権限があるのでもっている権力は絶大です。
その他の公務員
国家公務員は、国務大臣の下でじっさいに行政を執行する人たちです。行政府の実行部隊といったところでしょうか。当然、権力を使える立場にあります。
警察、自衛隊は法の範囲内で暴力をふるうことができますから。
地方公務員もこの中に含まれます。地方公務員は、知事や首長の下で、条例をもとに行政を執行する人たちです。
条例は憲法から外れることはできない
条例については日本国憲法憲法第94条に書いてあります。
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる
条例は、県や市町村がつくることができるオリジナルの法律です。国会がつくった法律から外れるものはつくれません。
憲法 > 法律 > 条例
の関係が成り立ちます。
条例も憲法から外れることはできません。
三権分立(司法、立法、行政)の機関ではたらいている人は権力をもつ、憲法を守る義務がある人だと覚えておくとよいでしょう。
天皇、摂政も憲法を守る義務がある
天皇や摂政は権力をもっていません。なのに、日本国憲法第99条では、天皇、摂政が憲法を守る義務があります。
不思議に思いませんか?これに『立憲君主』のキモがあります。
日本国憲法でいちばん大事といってもいいところなので、次回以降に説明します。
今のところは、日本の統治システムは立憲君主の民主制を採用していることを覚えておきましょう。
間違いあるある
ブラック企業にはたらいていた人など、企業と争いごとが起きて企業を相手に行動を起こすことがあります。そのとき、ごくごくたまに 『憲法違反だ!』と言っている人を見かけます。
これはまちがい。企業経営者は、経済活動のなかで権力をもっていますが、憲法に書いてないところにいるので、憲法を守る義務はありません。
『憲法違反だ!』と言える相手は憲法を守る義務がある人に対してだけ。
もし言えるとしたら、そういう企業に何も対策しない政府、厚生労働省などに対してです。注意しましょう。
このときは労働基準法とかの法律の問題です。憲法と直接の関係はありません。
労働基準監督署、弁護士などに相談しましょう。
まちがっても憲法をもち出してはいけません。言えるとしたら 『○○法違反だ!』です。
憲法を守らなければならない人をみてきましたが、どうして憲法の役割に『権力の暴走を止めるストッパー』があるの?と思いませんか?
これは、日本国憲法は『立憲主義』を取り入れたからです。
次回はこの立憲主義について考えます。