連載
日本国憲法を読む。 Vol.3
今回は、日本国憲法の『権力の暴走を止めるストッパー』という役割はなぜあるの? の解答編です。
その答えは『立憲主義』にあります。
立憲主義 はとても大事だよ。という話です。立憲主義がないと、憲法があっても、三権分立を確立させてもまったく意味がありません。
立憲主義とは何なのか? なぜ大事なのか?を考えます。
『立憲主義』は日本国憲法の基本中の基本
前回は、
と言いました。これは、日本国憲法は立憲主義の考えを取り入れた憲法だから。前に、
日本の統治システムは立憲君主の民主制を採用している
とも言いました。この答えもここにあります。
立憲主義って何?
権力者が自分の思い通りに何でもできる国ってどう思いますか?
いつもあーしろ、こーしろと言われ、嫌われたら監獄行き。権力者の気分で死刑。
イヤですよね?
これを防ぐのが立憲主義です。『近代立憲主義』『外見的立憲主義』ともいいます。ただ、ちがいがややこしいので、ここは細かく分けないで立憲主義と呼びます。
立憲主義は、憲法に書いてある範囲でだけ、権力者が権力を行使できます。権力者に好き勝手させないんですね?
憲法に立憲主義を掲げることで『暴走を止めるストッパー』の役割を与えているわけです。
日本国憲法には、
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
日本国憲法第98条
とあり、第99条と組み合わせて暴走しないようにしています。
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
日本国憲法第99条
これぞ立憲主義ですね?
注目は詔勅(しょうちょく)も憲法で制限します。詔勅は天皇が出す命令書なので、天皇の行動も制限されます。
- 立憲主義は、憲法の上にだれも、何も置かない。
- 立憲主義では、憲法の枠を超えて権力を使うことはできない。
立憲君主って何?
『アメリカ・フランス・ドイツ』と『イギリス・オランダ・スペイン』のちがいは?
と言われて何か思いつきますか?
アメリカ・フランス・ドイツは大統領がいる。
イギリス・オランダ・スペインは国王がいる。
国王は君主で、大統領は君主ではありません。
じゃあ日本は?
日本には天皇がいる。天皇は君主。
立憲主義を掲げた憲法があって君主がいる。
っていう感じです。ここで悩みました。
こうゆう議論をしたか分かりませんが、日本国憲法は天皇も憲法の下に置きました。
何人たりとも憲法の上に存在できません。天皇だろうがなんだろうが関係ありません。
明治憲法(大日本帝国憲法)はどうだったの?
前の憲法はドイツのプロセイン憲法を手本にしました。
(当時はまだドイツに皇帝がいた。)
でも立憲主義ではありませんでした。むしろ、自由民権運動から出てきた憲法草案のほうが立憲主義でした。
新政府が作った憲法を見た中江兆民(なかえ ちょうみん)は、
と言っています。
立憲君主を掲げた憲法を薩長のつくった自分勝手な憲法でつぶしたんですね?
これ以上は書ききれません。お許し下さい。
(僕自身まだまだ勉強不足でシンプルに書く力はありません。今後の宿題です。)
日本国憲法第99条で、権力をもっていないのに天皇と摂政も含めているのはこのためです。
立憲君主制では、君主(天皇)も憲法に縛られる
中国、北朝鮮、日本の違いもここにある
中国・北朝鮮は、意外(?)に思うかもしれませんが、憲法をもった民主主義の国です。
不思議に思いませんか?
中国・北朝鮮は独裁国家ですが、いちおう政党もあり、選挙もあり、権力分立の機能があります。
民主主義と共産主義は対義語ではありません。共産主義の反対は資本主義。
共産主義は独裁が多かったり、比較的自由が制限されるので自由主義も対義語で使われる。
学校の授業で、
三権分立(権力分立)は、権力を分散させてお互いに監視させることで権力の暴走を食い止める。
と教わった気がします。しかし、
三権分立で権力の暴走を止めることはできない。
学校では、目的はそうかもしれないけれど、結果がどうなっているかは教えていません。
中国・北朝鮮を見れば分かります。
の答えにもなります。
もう皆さんお分かりですよね?
立憲主義は独裁国家になるのを防ぐ
そうです。中国・北朝鮮の憲法は立憲主義ではありません。
中国は憲法の上に中国共産党がいます。中国の憲法には、
中国共産党の指導の下...
という文言があって、何でも中国共産党に指導されます。事実上の憲法の上の中国共産党。
だから、思想の自由があっても、政治結社を作る自由があっても、人権思想があっても、中国共産党の指導で『却下!』と言われたらおしまい。
よくニュースで、欧米のメディアに批判された中国の政治家が、
憲法に書いているからその批判はまちがいだ!
と言います。感想は皆さんで判断してください。
北朝鮮は、金一族が憲法の上にいます。実情は中国とあまり変わりません。
中国や北朝鮮が近代国家として扱われないことがあるのもここなんですね?
近代国家には立憲主義が必要で、近代国家のはじまりがフランス革命なのでそうなります。
近代以前
君主は憲法にしばられない。憲法の上にだれかが何かがある。
近代以後
君主も憲法では特別扱いしない。または君主制の廃止。
近代国家の憲法は立憲主義
このように、立憲主義は近代国家の憲法で基本中の基本です。
立憲主義を掲げない憲法を持つ国家、立憲主義を守ろうとしない国家は、近代国家として一人前ではありません。
ちなみに今の日本は残念ながら、立憲主義を掲げながら立憲主義を守れていません。
第二次安倍内閣は近年まれに見る『立憲主義の破壊者』です。『強いリーダーシップ』『決断力がある』と『立憲主義の破壊』のちがいに気づいていない国民も問題でしょう。
今回は立憲主義について見ました。次回は、日本国憲法で国民の義務より権利が多いのはなぜか? を考えます。
- 今の日本は立憲主義と言いながら、まったく立憲主義を守れていない。
- というか、日本人は立憲主義を知らない。
- 日本は近代国家として一人前ではない。一人前になる気もない。