連載
日本国憲法を読む。 Vol.7
第7回は、前に説明した立憲主義を忘れているのか知らないのか、理解できない人たちパート2です。
権力者とはいえ、人を批判することは書いていても、おそらく読んでいても気持ちのいいものではないので今回で終わりにしたいです。ただ、あまりにめちゃくちゃなので今回で終わるのか心配ですが。
自民党の第2次憲法改正草案を見てみよう
自民党の第2次改正草案がひどいです。
『憲法は権力の暴走を止めるストッパー』を分からないで作っています。日本の憲法は立憲主義を掲げているのを完全に忘れています。
ひとつひとつ見ていきましょう。
- 立憲主義に基づいて書かれているか?
- 国民の義務をむやみに増やそうとしていないか?
- 定義があいまいなものを無理やり決めつけてないか?
- 思い込みがないか?
を基準に見ていきます。まずは前文です。
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
第二次自民党案 前文
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自らを守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。
国民主権があいまい
『国民主権の下』とありますが国民主権が何なのか定義がありません。現憲法では国民主権という言葉はなく『主権の存する国民』です。
国民主権は学校で
と教えられます。(ボクの記憶では。)
しかし、これは間違いです。もし、1人1人に主権があったら
と誰かが言っても間違いじゃなくなくなります。実際は違いますよね?こいつ危ないぞ。と思われるだけです。
と誰かさんが1人で言ったところで、国会は法律を変えませんよね?
『国民』はグループ名
国民はひとつの概念です。例えば、『私は日本国民です』は通じますが、『日本国民は私です』は通じません。
日本国民は誰かじゃなくて、それぞれの私が所属するグループ名です。
主権が国民1人1人がもっている権利なら両方とも通じるはずですが実際は違います。国民主権の”国民”は、グループ名の”国民”です。
日本人の多くが”主権は国民1人1人が持っている”と思っているなら、国民主権とは何か?ということを定義する必要があります。
なぜ三権分立が前面に出ているのか?
三権分立を最重要視しています。三権分立が全治万能のシステムだと思っています。
『立憲主義はキモのキモ』でも言いましたが、権力分立では権力の暴走は止められません。止められるのは立憲主義です。
三権分立は、立憲主義を実現するためのひとつの方法で、前文に前面に押し出すほどのものではありません。
学校で先生から”これが大事だ”と言われ続けてきたために、頭に刷り込まれているのかもしれません。三権分立とは何か? ということを考えたことがない証拠です。
僕ならこう書きます。
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立憲主義に基づいて統治される。
ボクの勝手案
立憲主義の実現には、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて行ない、憲法に基づく法律・条例に従う。
国民主権については、条文でも附則でもいいのでどこかに定義すればいいと思います。
書いてあることが恥ずかしい
『今や国際社会において重要な地位を占めており』は恥ずかしいの一言です。本当にそうなのかは、国際社会に聞いてみないと分かりません。
自分で言っておいて実際は違ったらどうするのでしょうか?
(じっさい日本は金をもってるから持ち上げられてるだけで、裏では小バカにされてる。)
北朝鮮などのように、自分を強く見せて失笑を買うことが良くありますが、同じように思われないか心配になります。
僕ならこう書きます。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展してきた。その経験を活かし、国際社会において責任ある行動を行いそれを継続することで、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
ボクの勝手案
国民主権のところであいまいといっておきながら、これこそあいまいじゃないか?と思われるかもしれません。
国民主権は固有名詞なので、はっきりとしたほうがいいと思いますが、ここは理想なのでこれでいいと思います。
具体性が欲しいのであれば、条文に書けばいいと思います。
経済至上主義を入れてしまう軽薄さ
美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
第二次自民党案
科学技術の振興と経済を成長させることを盛り込む意味が分かりません。
実体経済を伴わない株価が上がることが、経済成長だと思っている政府与党にこれを言われると違和感だらけです。
科学技術の発展は大事ですが、発展すればいいというものでもありません。国家の良し悪しはこれらだけでなく、いくつもの要素の中の一つにすぎません。
全く否定するつもりはありませんが、ここまで強調されると単細胞にしか見えません。三島由紀夫の問題提起も知らないのでしょうか?
人間の幸せ = 科学技術の発展、経済成長だと本気で思っているところに、思考回路が1本しかないことが分かります。
あまりにもおかしなことが多すぎて、記事を分けて再構成しました。
次回は、家族を知らない自民党議員たちです。