平治の乱 メインキャストは平清盛ではない

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画平治の乱

平治の乱(へいじのらん)は、平清盛が源頼朝を伊豆へと追い出し、義経を寺に入れ、源兄弟の父である義朝が殺されるところが有名です。

しかし、本当はこれがメインではありません。戦いのメインは後白河上皇二条天皇の対立で、内部の複雑な権力闘争です。

この複雑などさくさに紛れて力を発揮したのが平清盛です。結局一番得をしたのは平清盛でした。

中世 平安時代 - 末期 -

保元の乱の後の動き

保元の乱に勝利した後白河天皇は、抵抗する勢力がほとんどいませんでした。そこで戦で功績のあった藤原通憲(ふじわら みちのり。信西入道)を重用します。

信西は、荘園整理を行い朝廷の改革を進めたので、この改革で既得権益を失った貴族からは反感を抱かれるようになります。

それでも信西は改革の手をゆるめませんでした。武家勢力の力を背景に天皇親政を目指していたからです。

この信西が、一人勝ち状態の後白河天皇派の、内紛を生む中心人物になります。後白河天皇は即位から4年目、早々と守仁親王に皇位を譲り上皇となります。

太上天皇(だじょうてんのう)

退位した天皇のこと。

上皇(じょうこう)

太上天皇の短縮した言い方。

太上法皇(だじょうほうおう)

出家した上皇のこと。たんに法皇という。

院(いん)

上皇の住まい。そこから上皇・法皇のことを『○○院』と呼ぶ。

詳しくは『太上天皇とは何か?』

朝廷内に新しい対立が生まれる

藤原信頼(ふじわら のぶより)は、信西と同じく後白河天皇から重用された人ですが、信西に不満を抱き徐々に対立していきます。

信西は、権力のすべてを自分のものにしていると見られていました。また、二条天皇の側近である藤原経宗(ふじわら つねむね)藤原惟方(ふじわら これかた)とも対立していきます。

二条天皇の側近は、

そもそも、鳥羽法皇が望んだのは二条天皇の親政で、愚か者の後白河上皇に治天の君の資格はない!

と批判し始めます。このことで、二条天皇と後白河上皇の親子関係もぎくしゃくし始めます。

  • 後白河上皇の部下同士の対立(信西。藤原信頼)
  • 後白河上皇と二条天皇の対立

朝廷内の対立が武家にも波及

藤原信頼に呼応する武士も表れ始めます。源義朝(頼朝、義経兄弟の父)もそれに加わりました。

なぜ義朝は信頼に呼応したのでしょうか?それは、信西が平清盛と姻戚関係にあって、清盛を重用して、その他の武士は蚊帳の外に追いやっていたからです。この清盛びいきがそのほかの武士の不満を募らせていました。

この時点では政治勢力の対立は拮抗していて、どちらが優勢というものではありませんでした。

  • 後白河上皇派(信西)
  • 後白河上皇派(藤原信頼)
  • 二条天皇派(反信西)
  • 平家一門(中立)

清盛は、藤原信頼とも姻戚関係を結んでいて、親信西、反信西とも距離を置き、また、上皇派、天皇派とも距離を置いていました。有利な方にいつでも行けるようにしていたということでしょう。

状況としては三つ巴の状態でした。

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ついにパワーバランスが崩れる

保元の乱から3年後の1159年、藤原信頼・源義朝が信西を倒すため挙兵します。このとき平清盛は、熊野へ参詣に出ていたため京都を留守にしていました。その軍事的空白を突いた挙兵です。

これが、”平治の乱”の始まりです。それを事前に察知した信西は京から逃亡します。しかし追っ手に捕まることを覚悟した信西は自害しました。

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クーデターの初動として成功させた藤原信頼は、後白河上皇、二条天皇の二人の身柄を確保し政権を掌握します。

この時点では、二条天皇派も裏ではクーデターを支持していました。反信西で利害が一致していたからです。

事態はさらに急展開する

しかし、事態はこのままでは終わりませんでした。二条天皇派が、この機に乗じて後白河上皇派を一掃しようとします。京都に引き返した平清盛を説得して味方に引き入れました。

この藤原信頼という人は人望がなかったようです。まず、二条天皇の六波羅への脱出と同時に、後白河上皇はいち早く仁和寺に脱出します。さらに、藤原信頼の仲間だったはずの貴族の面々が、続々と六波羅に集結し始めます。

これで勝負は決まりました。藤原信頼は斬首され、源義朝は逃亡中に殺され、頼朝は伊豆へ流され、義経は寺に入れられることになります。

平清盛は、武家勢力を平家で独占するために、わざと京都を留守にしたという話もあります。本当のところは分かりません。

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平治の乱の開始時の図に結果を加えるなら上の図のようになります。しかし、実際は違いました。

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後白河上皇派のボスである後白河上皇自身が、二条天皇派の一掃作戦に乗っかっています。実際は、六波羅にはいかずに中立的な立場を取ってはいますが。

平清盛は、源氏を倒すという利害のために、中立から二条天皇派に立場を変えました。この状況を見ていた摂関家を中心とした有力貴族が、雪崩を打ったように二条天皇派に加わります。

これが平治の乱の実態です。

”平治の乱”というと、平氏が源氏を倒したところばかり注目されます。しかし、乱のメインは上皇 vs 天皇または、それに連なる貴族 vs 貴族です。武士はあくまでサブキャラクターにすぎません。

現代のぼくたちは、武士がメインキャラクターになることを知っているから勘違いしているだけです。この当時は、乱の行き先を大きく左右する存在ではありますが、まだ主人公ではありません。

ここで、後白河上皇が力を発揮します。信西も藤原信頼も自分が重用した部下です。自分の身を守るためとはいえ、二人の共通の敵である二条天皇派の計画にあっさり乗っかっています。

時流をいち早く察知して迷いなく行動する

これが後白河上皇の一貫した行動です。ここから先も同じように時流に乗るためなら何でもすることになります。

御白河上皇は、自分の部下を捨てて、敵のはずの二条天皇派に乗り換えた

二条天皇は勝者にはなれなかった

ふつうなら、勝者の二条天皇が権力を握るはずです。でもそうはなりませんでした。

結果から言うと、二条天皇は敗者になり、勝者には後白河上皇がなります。ここが後白河上皇の異常な才能を発揮したところでしょう。

そもそも平家は、後白河上皇と対立するために二条天皇派に力を貸したわけではありません。武家勢力同士の利害関係で、源氏を倒せば平氏一門が独占できるからです。

それを分かっていた後白河上皇は、二条天皇に戦で仕返しをすることをしませんでした。平家とはむしろ距離を縮めていきます。

平清盛からすれば、まだ17才の二条天皇と、上皇になって政治力を発揮し始めた後白河上皇を比べた時に、平家にとっては後白河上皇と近づくことが利益になると考えたのでしょう。

後白河上皇は、平治の乱で自分の味方をほぼ失ってしまったので、さらに平家に近づいていきます。そして、清盛の武力を背景に二条天皇を退位させます。この時点で、清盛は完全に二条天皇を裏切ったことになります。

実は平治の乱の直後、後白河上皇は二条天皇派をすでに潰しています。二条天皇派の有力者で、天皇の側近である藤原経宗(ふじわら つねむね)藤原惟方(ふじわら これかた)を清盛に捕らえさせます。それから拷問にかけて、源頼朝が伊豆に流された時期とおなじころ、それぞれ、阿波、長門に配流しました。

それと入れ替わるように信西の息子を京都に戻します。

後白河上皇は、平治の乱で何もしていないのに、最終的に反信西一派を上皇派、天皇派関係なく一掃していました。二条天皇派は反信西派なので、この時点ですでに敗者になってしまいます。

ここから、後白河天皇と平清盛はお互いに利用し利用されることで互いの権力基盤を強固にしていきます。

  • 戦で勝ったのは二条天皇
  • 権力闘争に勝ったのは後白河上皇
  • 後白河上皇の勝利には平清盛の裏切りが影響した(二条天皇→後白河上皇)

一番利益を得たのは平清盛

勝者になったのは、後白河上皇と平清盛でした。後白河上皇はもともと権力の中枢にいるので、現状を維持しただけで平治の乱でおいしい思いをしたわけではありません。

一番おいしい思いをしたのは平清盛です。ライバルになりそうな源氏を一掃して、武家社会の利益を独占することに成功しました。

また、平治の乱では、複数あった貴族勢力がお互いに潰しあう結果になり、後白河上皇以外ライバルになりそうな人がいなくなっています。

清盛は、そのあいた穴を埋めるように、武家社会だけでなく貴族社会にも進出し、日本国全体を掌握していくことになります。

メインキャストでなかった人が、結果として一番の利益を得るというまさに”漁夫の利”というやつです。

 

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